クラシック(ビンテージ)カメラの中でも異彩を放つ、コダック・レチナ(Kodak Retina)。35ミリフィルム・カメラが高嶺の花だった時代、コダックがフィルム販促のために作り出した普及機で、程度の良いものが手の届く価格で(58ドル)eBayに上がっていたので、手元に置くことにしました。
大きさを比べてみました。左から順番に Nikon F301、レチナ、Rollei35と並びます。コンパクトさから言うとRolleiが際立って小さく、手のひらにすっぽりと入るサイズ。レチナは片手で掴むことができるサイズで、3台の中では中間に位置していますが、持った印象では大きいというより、ずっしり。重量感が際立っています。
付属品のケース。速写ケースと呼ばれる革製ですが、程度が良くとても1950年代に作られたとは思えないほどです。前オーナーが大事に使っていたのでしょう。
レチナに興味を持ったのは、フィルムカメラの創成期に普及版として作られたというと、レンズが折りたたむことができるという Folding Camera で、レンズカバーが閉じた状態では平らになります。撮影時にはレンズカバーを開けるのですが、そのためにはボディ底部のこのボタンを押すようになっています。
カバーを90度開けると、カチッという音がして固定され、レンズが完全に出てきます。シュナイダー・クセナーF3.5/50ミリ。
レンズ部分を少し詳しく見てみることにします。カバーを開けた時にレンズが出てくるのは、ボディとをつなぐ蛇腹が引き出される構造になっているため。レンズ部分に、距離/絞り/シャッタースピードをコントロールする目盛りが集中しています。
手元にあるのは、Ia(ワン・エー)。フィルム巻き上げがボディ上部についています。これはこのカメラが始めたもので、レチナ式と呼ばれるようになりました。上のボタンはシャッター。その下の小さなボタンは、フィルムリリース。フィルムを装填する際に使います。
カバーを開けると、おなじみの光景が出てきます。フィルムはこのように入れます。
蓋を閉めたら、カウンターを回して24(24枚撮り)に合わせます。フィルムを巻き上げるたびに、これが1つずつ減って行き、1になったところで終了。
距離計なし、露出計なし、目測で光を見ながらの撮影は初めてで楽しみではありますが、やはり心もとないので、露出計を入手しました。純正のものは手に入りにくいのですが、タイミングが良買ったようです。
正面の白いプラスチック製の蛇腹を開くと露出が取れるようになります。電源はセレン式と言って太陽電池のようなもので、ここに光が当たることで計器が動くので電池の必要はありません。
露出計を起動した状態でダイアルでシャッタースピードと絞りの目安をつけます。シャッターを押すまでの手続きは、写真を撮るということが体感できて大変勉強になります。露出計自体も50年ほど前と古いので、測光の正確性については1本撮ってみないとわかりません。クセというのもありそうです。
インスタグラムなどで流行ったアプリのフィルターはお手軽ですが、ハマった時のフィルムカメラの写真は、発色が独特で迫力がありますね。
レトロなカメラでレトロなものを撮るといつの写真かがわからなくなる、ということがわかりました。