モントリオールのアートな地下鉄駅巡礼

公共交通機関は訪れる街によって特色があります。モントリオールは、北米大陸がコロンブスによって発見された後植民地獲得のためやって来たフランスの強い影響下にあり、地下鉄にもその特徴が現れています。

出発前の準備

沢山の人が利用する駅は、設計段階で機能的であることが重視されますが、モントリオールの地下鉄駅は、開業当初からアートを加えたいという野心を持っていました。その概要はここに書いてありますが、開業当初(1966年)より現在に至るまで、90点あまりのアートが駅構内や入り口付近に組み込まれています。調べてみると本家フランスもそういった傾向にあるらしく、アートを重んじる文化的な影響はこんな所にも表れていると感じます。

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数多くある地下鉄アートを「巡礼」的に回ったら面白いかもしれないと思い立ったのは、2015年のこと。事前に公式ウエブサイト上にあるリストを見て計画を練り、どうしたら効率良く回ることができるかを色々と考えました。写真付きで駅のアートが開設されているので便利。興味のあるところをピックアップし、手書きのメモに書き入れて行きます。

1 SNOWDON(ブルー線)
2 JEAN TALON(オレンジ線に乗り換え)
3 HENRI-BOURASSA
4 CREMAZIE
5 BERRI-UQAM
6 CHAMP-DE-MARS
7 PLACE D’ARMES
8 MONK
9 LIONEL-GROULX(緑線に乗り換え)
10 LASSALE
11 CHARELVOUX
12 PEEL
13 McGILL
14 PLACE-DES-ARMES

切符の買い方や乗車方法はこちらに書いた通りですが、効率的な乗り換えを考えつつ地下鉄駅巡礼のスタートです。

出発は歴史的な駅から

地下鉄は鉄道発祥の地ロンドンで Underground、フランスは METRO、アメリカでは Subway と3種類。特に決まりはないようですね。

モントリオールはもちろんフランス式の METRO 。ブルーと矢印があしらわれたサインが、地下鉄入り口の目印です。

Square-Victoria–OACI 駅入り口
この入り口ですが、中でも異彩を放つのは開業翌年(1967年)にパリ交通公団(Régie autonome des transports parisiens)から寄贈されたアール・ヌーボー・デザインの装飾が施されたこの駅。

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製作はフランス人建築家にしてアール・ヌーボーの巨匠、エクトール・ギマール(Hector Guimard)。パリとの深い繋がりを象徴するここは「巡礼」のスタートとしてぜひ訪れたい場所です。

アートな地下鉄駅

開業当時からモントリオールの地下鉄駅にアートを取り入れる計画が立てられていて(歴史についてはここに説明されています)、当初は模索があったようです。

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歴史をたどると、最初に作られたのは McGill駅の Maurice Savoie 作「Murals (1966)」のようです。訪れてみるとかなり地味ですが、始まりを見ておくと進化具合が理解できます。

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しっかりサインが入っています。場所は改札の外側ショッピングモールの入り口です。

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次に訪れたいのは、同年に作られた Peel駅の Jean-Paul Mousseau 作「Circles (1966)」。ホームへ降りる階段のアートが最も印象的です。

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翌年1967年に設置されたのが、Place-des-Arts駅にある Frédéric Back 作の「Histoire de la musique à Montréal (1967)」。モントリオールの音楽史がガラスに描かれた美しい力作。

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場所は、改札の外側です。

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3年後の1968年になると、これまでは改札の外だったアートが駅構内に組み込まれるようになります。まずは Montmorency駅のプラットフォームの Georges Lauda, Paul Pannier and Gérard Cordeau「Le poète dans l’univers (1968)」。巨大な作品でなかなかの迫力があります。

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エスカレータの横にもありますが、ここはフロア全体が一つのアートとしてデザインされていて、なかなか迫力があります。この年の作品を見ていると、ようやくモントリオールの地下鉄アートプロジェクトが本来の目的を達し始めているように感じられます。

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もう一つ訪れたいのが、同年に完成した Champ-de-Mars駅改札側面窓に設置された Marcelle Ferron 作のステンドグラス。このデザインはアートプロジェクトの成功例として、マイルストーンとなっています。差し込む光がステンドグラスを照らし、地下鉄駅構内とは思えないような美しい空間を作り出す計算し尽くされた印象的な駅となっています。

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こんな風に見ていくとキリがないのですが、最後にこの巡礼で押さえておきたいのが Joseph Rifesser作「The Tree of Life (1978)」。この作品は、カナダ建国100周年の記念の年にモントリオールで開催された万国博覧会(Expo 1967)の際に国連館の前に展示されたものが、10年後にここに移設されたという経歴を持っています。

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場所は、Lionel-Groulx駅構内の改札を入ってプラットフォームへ降りる階段の踊り場の所にあります。

この他にもまだまだ印象的なアートがあり、全部見るには何度か訪れるしかなさそうですね。

フランス技術の車両も見所

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もう一言、ブルーと白のツートンの車両は世界でも珍しいフランスから技術輸入されたラバータイヤ式。ローリングストックは、型番 MR-63(初代/2016年〜2018年)と MR-73(2代目/1973年〜)の2種類で、初代は今年(2018年)に現役を引退、2代目は現在も走行中ですが、2016年からは次世代型の新型車両へ順次置き換えが始まっています。

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それが、2016年より緑&オレンジ線に導入(2018年現在)されている MPM-10(愛称 AZUR)。

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旧式の MR-63 と MR-73 より広く・明るく、近代的な車両で、

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ドアも大きく開き、

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車両にはものすごく大きなディスプレイがあり、路線図に加えて様々な情報が表示されるように工夫されています。

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車体はシルバーが基調ですが、キーカラーのブルーもしっかり入っていて、オシャレになりました。