自分でキーボードを作れるということをトロントで知り、しかも分割キーボードの存在を Minidox の画像を見て衝撃を受けてから半年。今回は2度目の製作で、前回の不満点の改善策として、ケースをちょっと薄くしてみようと思います。
最初の Minidox は厚かった

キーボードを割る(分割キーボードにする)という発想自体がなかった当時、このカタチは衝撃で、今思えば自作キーボードを始めるきっかけとなった一台。製作過程の一部は過去のブログに書きました。

使ってみて唯一の不満点があるとすれば、ケースのゴツさ。原因はこのネジと厚み。これを今回は薄くしてみたいと思います。
基板は自分で発注

今回は作者のページから KiCad データを入手し、ファイルを開き「プロット」から「ガーバーファイル」を書き出します。この辺の詳細は前回書きましたが、念のため手順だけ。

パソコンの適当なところにファイルを展開し、KiCad で開きます。

緑色の MiniDox_kicad_pcb をクリックすると、

配線済みのデータが画面に表示されます。

このデータには一切触れず、メニュー「プロット」を選択。基板制作に必要なガーバーデータというファイルを書き出します。

必要なファイルは7つ。

ドリルファイルも出力します。アップロードなど詳細は前回書いた際に参考にしたテキストに詳しく解説されています。

基板は jlpcb.com で。MiniDox の作者はカナディアンなので、今回はカナダカラーの赤基板を注文し、香港を経由して1週間ほどで到着。
取り付けパーツを入手
基板に取り付けるパーツは下記の通り。
1)Pro Micro(2個)/遊舎工房・Aitendo・Talp Keyboard
2)Pro Micro 用24ピンソケット
3)ダイオード(36個)/遊舎工房・秋月電子・海外通販
4)オーディオジャック(2個)/マルツ・海外通販
5)スイッチ(36個)/遊舎工房・海外通販
6)キーキャップ(36個)/遊舎工房・Talp Keyboard・海外通販
7)ケース/emerge+
入手困難なのは、3)のオーディオジャック。海外製の基板取り付けパーツ CP-4314-ND は日本買えなくもないのですが、マルツさんで取り寄せ以来。1ヶ月後に到着してパッケージを見たら Digikey でしたので、慣れているのであれば直接やってもいいかもしれないですね。
ダイオードは通常タイプと SMD という小さなチップも取り付けられるため、今回は AliExpress で 3000個入ったリールを注文。値段は送料込みで1700円ほど。
SMD は遊舎工房でも販売している(100個で216円)ので、通常はここから買うのが一番手っ取り早い(ただオンラインには載っていない)でしょう。

単価はリールが 1.76円で、遊舎工房が2.16円。例えばキーボードを10個作るとして一つに50個使ったと仮定した場合500個使い、遊舎工房のパッケージが5個必要なので1080円。その度に使う交通費などを考えると、1700円で3000個買っておいても損はないかもしれないと思います。
最後にキースイッチ。基板には Cherry MX と Alps 共用のフットプリントが使われているので、 Alps 系のスイッチを持っている場合も取り付けは可能です。住居のあるトロントで入手した Matias 製スイッチが残っているのですが、ショップを見たら北米以外は発送していないようですね。
各部はんだ付け

パーツが揃ったら、基板へのはんだ付けを始めます。手順はここにありますが、おおむね以下の通り。
1)ジャンパで基板の左右を指定
2)ダイオード
3)Pro Micro
4)キースイッチ と オーディオジャック
今回から SMD ダイオードを使います。通常版と同様向きがあります。

ダイオード上には「T4」という文字が書かれていて、Tの左隣に縦線が入っています。この縦線を基板のダイオードの四角穴方向につけます。とにかく小さなダイオードで、はんだ付けには慣れが必要。間違えてキーが反応しない場合はまず、この向きが逆になってしまっているということが多々ありますので、充分確認してつけてゆきます。

はんだ付けは、まずは基板にごく少量の予備はんだをし、ピンセットでつまんだ SMD を再び溶かしたはんだにスライドさせるように起き、コテを外してはんだが固まったのを確認したら反対側は少量のはんだを直接つけるというやり方がいいようです。

はんだの量はごく少量でいいので、できるだけ細いものを使用します。写真の上は0.3mm、下は0.8mm。SMD の場合は0.3mm を使います。

Pro Micro は今回もソケット化しますので、ダイオードをつけ終わったら24ピンソケットのはんだ付けをします。詳細はここに書いておきました。
ケースのデザインと取り付け
前回は公開されているケースデータを使いましたが、今回はこちらも自作。制作時に留意したのは下記の点。
1)ネジは使いたくない
2)薄くコンパクトにする
まずは基本となる外形データの描画。最も正確なのは、KiCad から基板の外形線(Edge.cuts)を SVC ファイルで書き出しておき、これを下敷きにしてドロー系ソフトでなぞって行きます。

私の場合は iPad 上のグラフィックソフト Graphic が SVG ファイル読み込みに対応しているのでこれを使います。Apple Pencil でトレースして、最初に考えたコンパクトにするための条件に合うようケースの外形を書いていきます。

基板上ではキースイッチのレイアウト部分は変わらないので、公開されているケースデザインを 別に読み込み、

データはコピペですが、キースイッチだけをレイヤーから抜き出します。方法としては、キースイッチだけ選択してロックをかけ、いらない部分は削除。ロックがかかったキースイッチだけ削除されずに残るというわけです。

このようにして、先に書いた外形データにオリジナルのキースイッチデータのみをコピペして、基本となるケースデータを書いていきます。現状では基板ジャストサイズ。左右端のみ(上下は基板とジャストサイズ)を3ミリ広げてケースを固定するように設計すれば、コンパクトさも実現できます。

固定するための細かなパーツも作り、カットデータを送ります。

ケースはいつものように emerge+さんでアクリルを切ってもらいました。薄くするために Pro Micro とオーディオジャックの部分を切り欠いたので、オリジナルのものを改変。

はまるかどうか確認。

薄型にするポイントの Pro Micro と TRRS ジャックの部分を切り欠き。これらがピッタリはまるようにしました。

アクリル板の厚さは全て3ミリ。トップ+固定用パーツ2個+ボトムで合計の厚さは12ミリ。基板の出っ張りがなくなり、薄さが確保できました。

組み立ては、トップとボトムの2枚には固定するための枠パーツをアクリル専用接着剤で固定。接着剤は仮止めしたアクリル板の間に専用の針で染み込ませるようにして付けるという、なかなか神経を使う作業です。どうしてもはみ出てしまって見苦しい場合は、プラスチック磨きでこするとある程度は綺麗になります。

ここまで来たら、ケーブルをつなぎ最終の動作確認を行います。問題がなければ、2枚のプレートを両面テープで止めます。接着剤で止めても良いのですが、万が一何かがあった時基板にアクセスができなくなることを考えて、透明の両面テープでしっかり止めておきます。

この状態では Pro Micro は若干出ますが、ボトムプレートにホームセンターで買ってきた衝撃吸収パッドを底面に貼り付けることでカサ増ししますので、直接テーブルなどには触れないようになります。

アクリル板と Pro Micro の隙間は1ミリ。IC 抜きが入りますので、チップの抜き差しはできます。

一点気になったのはこの出っ張り。ほんの2ミリほどですが、これは KiCad に戻り Pro Micro の位置をずらして配線の微調整で対応できそうです。